研究経歴を認められたうえでの推薦で入所。入所後に感じたギャップは、アカデミックな雰囲気があまりなく事業所といった感じで業務が遂行されており、アカデミアの研究者として切磋琢磨できる場ではない。また、任期付の研究員と任期なしの研究員に分かれており、業績を作って余所に出て行かなければならない任期付研究員と、業績がなくても終身雇用が保障されている任期なし研究員では、待遇にとても不公平感を感じる。

基本的に国の運営費で事業が行われているので、完全に業務という形の仕事である。これから政府は科学研究における予算を減らしていくことが予想されるので、大幅な人員削減が将来的に予想される他、任期のない終身雇用の研究員の数も大幅に削減されると思われる。また、そのような状態であるにもかかわらず、東北の震災の復興関連として全職員の給与も一律削減された。

任期のある研究員と、定年制の研究員の間の待遇格差が顕著。また、基本的に研究員は使い捨てであり、5年の任期のうちに出ていくように命じられる。しかし一方で、10年以上もなあなあのまま更新し続ける研究員もおり、その評価があいまい。良くも悪くもアカデミア特有の文化を多分に有しており、組織としてのまとまりが全くない。また、上層部が世間体ばかりを気にしており、科学者としてのプライドを何も感じない組織であるため、この業界で上を目指そうというモチベーションをそがれた。

アカデミアという業界の中では、給与や福利厚生の水準は高い方だと思う。ただ、基本的に契約研究員であり、5年を目途に外に出ていくことを推奨されているため(若手研究者が長期間いる場ではなく、キャリアアップのための踏み台であることを公言している)、キャリアパスという点では内部での昇進はほぼ皆無か、運が良ければという感じである。昇給は基本的になし。あっても、年1%程度。職位が上がれば昇給はあるが、内部昇進は上記のとおりほぼなし。評価制度は年に一回の上司との個別面談があり、そこで評価がなされるが、業績に対する評価も直属の上司次第。アカデミアであり、上司(研究室長)は自分で選べるので、どんな研究室を選ぶかは自己責任。

今までの研究がどのように活かされるのか?また、これからどのようにそれを展開していくのか?面接は形骸的なものであり、既に内定をもらった後での顔見せ程度のものである。面接担当者は研究所の研究室長クラス全員プラス事務担当の数人。アカデミアであるので、直属の上司となる人がOKと言えばそれで採用されるが、よほど人物に問題がある場合は覆されることもあるようなので、社会人として最低限の注意は必要。

一般大企業並みの休暇制度があり、自由に有給も消化できる。労働時間は、基本的に研究員は裁量労働制なので、定額の年俸だけで残業や休日出勤等も無し。出張などでやむを得ない場合は、代休を強制的に取らされる。住宅補助は、半額(上限あり)。研究所によっては寮もあり。研究所内に安く利用できる食堂あり。その他、育休産休などに関しても休暇制度はしっかりしている。また、研究所内のレクリエーションなども充実しており、スポーツ大会やパーティーなど、年に数回あるので、そのような場に出席して他部署の人と交流をするのが好きなのであれば、良い制度だと思う。

英会話などの講習は経費で受けることができるので、週に一回の英語プレゼンテーションクラスなどに参加している。また、PCスキルなども公費で受講可能で、過去にアドビ・イラストレーターの通信講座などを受講した。これ以外にも様々なスキルアップのための制度はあるので、上手く利用していくと研究者としてだけでなく、様々な知識は身に付けることができる。

基本的に勤務形態は自由なので、プライベートと仕事のバランスは取りやすい。勤務時間中に一時退出しても問題ないし、子供がいる人は多少遅く来ることや、早めに帰ることなども、自分の裁量でできる。研究所そのものがワークライフバランスについて積極的に取り組んでいるわけではないが、理解はあるので自分で積極的に利用することで、自由に働くことができる。

【社長】野依良治理事長理事長はノーベル賞受賞者。研究所長もその業界の有名人であり、政治的な力の強い人ではあるが、決定力があるかどうかは疑問である。研究所長は若手一般研究員にもフランクに接してくれるので、一緒に食事をしたりとか、飲んだりする機会もあり、そういう時には色々なことを言えたり相談したりできるので、そういう部分では魅力的である。