日本原子力研究開発機構は、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合されてできた組織で、まだそれぞれの文化が根強く残っており、ひとつの看板の下に二つの会社があるような状態である。基礎研究が希望であれば旧原研の職場が良く、プロジェクト志向であれば旧サイクル機構の職場が良い。どちらも、民間では出来ないような仕事ができるので、理系には魅力的な会社である。

研究者はみなし労働時間制を選んで仕事をしており、研究の区切りが付かなければ深夜でも土日でも出勤して研究を行っている。本人たちは研究して、論文を書くことに命をかけているので、特段は不満がないようである。 技術系・事務系は残業すれば残業代が付くが、予算が削減されており、勤務時間中に効率的に仕事を行い早く帰ることが奨励されている。

原子力関係の資格、放射線取扱主任者、核燃料取扱主任者、原子炉主任技術者の資格取得が会社から薦められる。資格取得のための社内研修も充実している。昔は通信教育にも半額補助がでていたが、現在はない。公務員改革に歩調を合わさざるを得ず、福利厚生、教育がだんだん悪くなってきた。社員食堂に会社が補助を出せなくなり、値上がりした上に質が落ちた。すき家で牛丼を買った方が安くてうまい(個人の感想)。

福島原発事故以来、原子力が逆風であるが、福島原子力発電所のデコミにはこの先数十年かかり、いろいろな技術開発をしなければならず、解決すべき課題は山積している。仕事がなくなるという心配はなく、それよりも人手が足りず優秀な若い研究者、技術者が配属されるのを現場は心待ちにしている。今から入社しても定年退職するまで暇になるということはありえないので、その点は安心して大丈夫である。

昔は男社会であったが、最近は管理区域の職場にも女性の技術者が配属されるようになった。しかし、被曝の多いところには配属されない。これは差別というよりも母体の保護のため会社が配慮していると思われる。女性の管理職もだんだんに増えてきた。研究職では活躍している女性が目立ってきた。会社としても女性研究者の採用に力を入れているようで、積極的に応募することを薦める。セクハラ防止にも力を入れており、下ネタの冗談なども全く聞かなくなった。総じて、女性の働きやすい職場になってきている。

職員(正社員)の数がだんだん減り、一人当たりの仕事量が増えてきているので、なかなか休み難い状況になったきた。旧日本原子力研究所では障がい者をアルバイトに採用するなどしており、社会的弱者に優しい風土がある。このため、家族の介護のための休暇取得も旧日本原子力研究所の職場では比較的取りやすい。ただし休んで積み上がった仕事は自分で処理しなければならない(研究職場では他人が代わりようがないため)。旧核燃料サイクル開発機構の職場はやや休み難いが、チームで仕事をしているので、誰かがフォローしてくれる。どちらもそれぞれ、一長一短がある。

【社長】松浦祥次郎もんじゅの点検漏れの問題以降、役員と若手研究者・技術者の直接的な意見交換会を開催している。松浦理事長自ら意見交換会に出席することもあり、若手のとっぴもない意見にもしっかり耳を傾けて頂いている。旧日本原子力研究所の職位に係らず自由に議論できる風通しの良い社風を旧核燃料サイクル開発機構の職場にも根付かせようとされており、機構の改革がだんだんと進んでいる印象がある。いまの機構になくてはならない理事長である。

旧日本原子力研究所の上司はもともと研究者なため大学の先生のような雰囲気があり、博学、自由であるが、マネージメントは嫌いな方が多く、また成果についての評価は厳しい。 旧核燃料サイクル開発機構の上司は、組織で仕事をすることを意識している人が多く、マネージメント力を学べるのが魅力である。成果もみるが途中の経過も評価してくれることが多い。

卒業研究のテーマについて分かりやすく端的に説明せよという質問があった。面接官は理系の方らしく、こちらが説明した内容についてさらに詳しく突っ込んできた。いま流行の圧迫面接のようなことは全くなく、淡々と穏やかな雰囲気のなかで面接がされた。卒業研究の内容説明では、専門外の人に対して分かりやすく説明できるコミュニケーション能力があるかをみているようであった。後で聞いたところによると、よく知っている人ほど簡単な言い回しで説明できるので、知識・理解力も確認できるとのことっだった。

日本原子力研究開発機構は日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合してできた組織である。入社してから、運よく両方の組織の現場で働いたが、雰囲気が全く異なっていた。旧日本原子力研究所の職場は大学の研究室のようで、一方旧核燃料サイクル開発機構は工場の現場のような雰囲気であった。組織風土が全く異なっていたので非常に戸惑った。